福岡県久留米市の人口動態について


(株)IIJイノベーションインスティテュート
藤田昭人 石原靖子 


はじめに

政府や地方公共団体はビッグデータ分析の魅力的なデータソースの1つです。政府や地方公共団体が公開するオープンデータは主に住民向けの公共サービスなどの利便性向上に活用されているように見えますが、我々のような時系列データの分析方法を研究する立場の人間には政府や地方公共団体にも長期間記録され、連続的に変化する数値データがあるのではないかと考えてきました。

地方公共団体の公開データ

このところオープンデータの活用についてお話をうががうため地方公共団体を訪問する事が多いのですが、実際にオープンデータの公開に積極的な団体はまだまだ少数派です。そんな中で、住民基本台帳関連のデータは市町村レベルでも比較的データ公開が進んでいることがわかりました。正確に調べたわけではないのですが、概ね全国の3分の2程度の市町村ではなんらかの住民基本台帳関連データを開示しています。元々、市町村の統計を取りまとめる部局があり、毎年統計資料を公表しており、また、住民基本台帳の管理は情報インフラがしっかりしているそうで、公開用のデータを効率良く生成できる事もその理由なのかもしれません。

人口動態学

我々は住民基本台帳の人口データを活用した時系列分析の方法を調査しています。

人口を時系列データとして分析する試みは 人口動態学 という学問に分類されるそうです。この学問、なんと200年前の産業革命期のイギリスで起こったそうですから、統計学よりもさらに歴史のある学問のようです。この分野の古典的論文である マルサス『人口論』 では「人口は制限されなければ幾何級数的に増加するが、生活資源は算術級数的にしか増加しないので、生活資源は必ず不足する」との『人口の原理』が述べられているそうで、この原理から導かれる人口増加に伴う『貧困の出現』がこの論文の主題だそうです。逆に人口減少に伴う社会問題の発生が危惧される今日にも通ずる問題を取り扱う学問のようです。

地方公共団体が公開する住民基本台帳の人口データ

地方公共団体が公開する住民基本台帳の人口データは 我々が引越しの際に市役所等に提出する転出届や 転入届の内容を元に更新されているデータベースです。 任意の時刻で集計した人口を「住民基本台帳登録人口」と呼びます。 あるいは単に「 登録人口 」と呼ぶこともあるようです。転出届や転入届の内容には個人情報が含まれますので、登録内容すべてが開示されているわけではないのですが、人口に関わる基礎情報としては毎月の1日時点での総人口、男性人口、女性人口、世帯数などが公表されてます。5年毎にしか実施されない国勢調査の人口データよりも時間軸で粒度が細かいデータが得られるのが「登録人口」データの魅力です。

福岡県久留米市の人口データ

既に、我々はいくつかの地方公共団体の人口データを入手し、時系列グラフによる可視化など簡単な分析を始めていますが、現時点でもっとも興味深い人口動態が確認できているのは福岡県久留米市の人口データです。同市が公開する人口データの集計結果を以下に示します。

【グラフ1】久留米市の人口動態グラフ

住民基本台帳による「登録人口」データを実際に集計してみたところ、我々の予想に反して時間軸に対して非常に過敏に反応するデータでした。人口変動の周期性を把握するため年単位での折り返しでグラフ化してみます。

【グラフ 2】2008~2010年
【グラフ 3】2011~2015年

既存の都市雇用圏による分析 [3] によれば、久留米市は今後人口流出が進むとされていますが、このグラフに見ると2011年を境とし、2012年以降は人口増加に転じています。この我々の集計結果は 平成27年10月に同市が公表した人口ビジョン [1] の将来人口推計の内容とも一致します。人口動態の分析手法には様々な考え方があり、各々の分析結果が一致しないことがあるそうですが、この都市雇用圏による分析は2010年までの国勢調査結果データに基づくため、2011年以降の人口動態が反映されていないと思われます。

住民基本台帳の人口データは最新データが公表される間隔が月次なので「リアルタイム」という表現はあまり正確ではないように思いますが、人口動態について「今、どのような状態にあるか?」を常時把握するニーズがあるとすれば、ビッグデータ分析の具体的な活用事例になり得るだろうと我々は考えています。

九州新幹線 博多ー熊本間の開業の影響

さて、前述のグラフを見れば久留米市の人口が減少から増加に転ずる転換点は2011年あたりということが見て取れますが、2011年に発生した久留米市の人口動態にインパクトのある要因は直感的には2つ考えられます。

1つ目は東日本大震災の被災者の流入です。これは全国的に確認されていることですが、東北地方からその他の地方への人口移動が発生しました。九州地方の各県でも2011年〜2012年に目立った人口流入が確認されているそうです。

2つ目は九州新幹線の博多ー熊本間の開業です。一般に、新幹線の開業は地域経済に影響を与えます。

通勤圏内の拡大に伴うベットタウン化の加速など、人口動態にも影響が出ると考えられます。

そこで九州新幹線の開業が開業地域の人口動態に影響を与えたか?を確認するため、博多ー熊本間の新幹線停車駅が所在する市町村の人口変動を確認してみます。九州新幹線の路線を次に示します。

【図 1】九州新幹線(鹿児島ルート)

Kyushu Shinkansen map Kagoshima route and Nagasaki route

By Hisagi (Own work) [CC BY-SA 3.0 or GFDL)], via Wikimedia Commons

政令指定都市である福岡市と熊本市を除く博多ー熊本間の新幹線停車駅が所在する市は次の5つです。

久留米市以外の4市の人口変動を以下に示します。

【グラフ 5】鳥栖市の人口動態グラフ
【グラフ 6】筑後市の人口動態グラフ
【グラフ 7】大牟田市の人口動態グラフ
【グラフ 8】玉名市の人口動態グラフ

各々のグラフから読み取れることは、久留米市を含む5市のうち人口増加が確認できるのは鳥栖市と久留米市の2市のみです。また久留米市以外は人口動態の転換点が見出せません。

九州新幹線開業の効果が久留米市に限定されるのは何故でしょうか?代替通勤手段としての九州新幹線の利便性が関連していることが推測されます。九州新幹線博多ー熊本間の路線はJRの在来線と西鉄天神大牟田線が並走しています。次の表に各々の上記5市から博多(西鉄天神)までの所要時間を列挙しました。

【表 1】
地名 新幹線
つばめ
JR快速 西鉄天神
大牟田線特急
鳥栖 0:14
新鳥栖
0:28
鳥栖
0:29
西鉄小郡
(急行)
久留米 0:19
久留米
0:34
久留米
0:29
久留米
筑後 0:26
筑後船小屋
0:50
筑後船小屋
0:45
西鉄柳川
大牟田 0:32
新大牟田
1:03
大牟田
0:59
大牟田
玉名 0:41
新玉名
1:27
玉名

路線の所要時間だけでの単純比較であれば筑後、大牟田、玉名の各市は概ね半分以下になるのでメリットがありそうに見えます。しかしながら、新幹線用の新駅の立地条件を考慮すると所要時間は大きく変わってきます。次の表は各市の在来線駅と新幹線駅との距離と徒歩による移動時間を列挙したものです。

【表 2】
地名 会社 在来駅 新幹線駅 距離 徒歩
鳥栖 JR 鳥栖駅 新鳥栖駅 2.4km 0:29
鳥栖 西鉄 西鉄小郡駅 新鳥栖駅 7.5km 1:32
久留米 JR 0.0km 0:00
久留米 西鉄 西鉄久留米駅 久留米駅 2.4km 0:30
筑後 JR 0.0km 0:00
筑後 西鉄 西鉄柳川駅 筑後船小屋駅 7.8km 1:36
大牟田 両方 大牟田駅 新大牟田駅 6.6km 1:22
玉名 JR 玉名駅 新玉名駅 1.8km 0:22

各市の市街地は在来駅の周辺に広がっていますが、新幹線が在来駅に乗り入れているのは久留米駅と筑後船小屋駅だけです。筑後船小屋駅はもともと市街地から離れた場所に所在するためその利便性を活かせません。結局、通勤手段としての新幹線開業によって所要時間の短縮の恩恵を得られるのは久留米に在住し博多へ通勤されている方々が中心になるように推測されます。とはいえ、久留米ー博多間の運賃はJRで740円、西鉄ならば620円です。たかだか10分程度の短縮のために新幹線の自由席特急料金850円を払って通勤する方々、あるいはそれを交通費として許容する企業はそれほど多くないように推測されます。

九州新幹線博多ー熊本間の開業が久留米市の人口が2011年を境に増加に転じている要因だと断じるのは、無理があるというのが現時点での結論です。新幹線開業が久留米市の人口に影響している可能性はあると考えますが、その影響度を調べるためには、久留米市在住の方々の新幹線定期の購入数など、新幹線の利用を示す直接的なデータを組み合わせた分析が必要だと我々は考えています。

久留米市の年齢別人口動態の分析

それでは久留米市の人口が2011年を境に増加に転じていることには、他にどのような理由があるのでしょうか?

前述のもう一つの直感的要因の東日本大震災の被災者の流入が理由の1つにある可能性は高いと思います。が、残念ながら今のところ我々は東日本大震災の被災者に関する統計情報を入手できていません。これでは東日本大震災の被災者に焦点をあてた分析は不可能です。

そこで、我々は住民基本台帳の年齢別人口データに着目することにしました。年齢別人口データであれば各々の年齢から想定したライフスタイルの仮説を考えることができます。例えば、18歳の人口に注目すれば就職や進学という理由で転入・転出が発生したことが仮定できます。あるいは小学生以下の児童の場合は親と一緒に転入・転出することが多いので、6歳~12歳の人口動態はその親の集団(特定することは難しいですが)の人口動態となんらかの相関性があるはずです。

コホート(同時出生集団)

このような「共通の因子を持つ観察対象」を統計学ではコホート(cohort)と呼ぶそうです。特に人口学では「同じ年齢あるいは同じ期間に出生した集団」という意味の同時出生集団と訳されます。コホートは将来人口の推計に持ちいられますが、その算出方法は 「地方人口ビジョン」及び「地方版総合戦略」の策定に向けた人口動向分析・将来人口推計について [4] に簡潔かつ実際的な解説がされています。タイトルからもわかるように、この資料は地方公共団体が「地方人口ビジョン」を作成するために用意されたガイドですので、現在、各地方公共団体が公表している「人口ビジョン」の将来人口推計は概ねこの資料の方法に基づいて計算されています。 同資料が推奨する国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の将来人口の推計方法では合計特殊出生率と出生可能な集団の人口から将来の出生数を算出しますが、コホートである出生可能集団を「15~49歳の女性」と定義し、男女5歳階級別人口データから実値を得ています。

同年齢集団 -- より粒度の細かいコホート

このように将来人口推計ではコホートを「15~49歳の女性」と定義しますが、コホートは本来分析目的に応じて任意に定義できます。ただし、その任意性には「裏づけとなるデータが存在する限りにおいて」という制限が付きます。前述のように特定の年齢に注目した人口動態を分析する場合、例えば、就職や進学という共通因子を持つ「18~22歳の男女」をコホートとする場合には、より詳細の年齢別データが必要になります。そこで我々は男女年齢別(1歳階級別)人口データを集めることにしました。

各地方団体の人口データの公開方法は様々ですが、久留米市の場合は 久留米市 住民基本台帳 年齢別人口 [2] ページから男女年齢別人口データをダウンロードすることができます。 データ形式は Microsoft Excel のブック形式(XLS)で平成26年以降のデータは1つのファイルに各月のデータが1つのシートの形で、平成14年~平成25年は1年分が1つのファイルで12ヶ月分のデータが各月ごとシートを分けて、すなわち1ファイル12のシートの形で格納されています。 同年齢集団データを生成するためには全てのシート(168シート)からデータを抽出し、生年月毎に集計しなければなりません。Excel を使ったコホートの集計方法は 前述の資料 [4] に解説がありますが、月次の同年齢集団の集計はデータ量が飛躍的に増えるため、Excel が非常に重くなることがあります。

久留米市の年齢別人口データによる同年齢集団の分析

それでは久留米市の同年齢集団を見ていきましょう。ここでは人口増加が確認できた平成24年~27年の期間について、年間で最も人口が増える11月1日の同年齢集団別人口を表に示します。

【表3】平成24年~27年11月の同年齢集団別人口と増減数
age birth H24.11 H25.11 H26.11 H27.11
0 2015 2893
1 2014 2840 2900
2 2013 2887 2942 2977
3 2012 2864 2938 2951 2949
4 2011 2968 2943 2940 2954
5 2010 3013 3007 3026 3000
6 2009 2856 2837 2843 2844
7 2008 2895 2897 2925 2942
8 2007 2773 2762 2756 2772
9 2006 2815 2814 2818 2818
10 2005 2749 2750 2756 2778
11 2004 2841 2830 2830 2830
12 2003 2784 2789 2793 2797
13 2002 2982 2988 2999 3005
14 2001 2991 3000 3002 3007
15 2000 3047 3052 3074 3097
16 1999 3021 3032 3057 3072
17 1998 3043 3066 3081 3082
18 1997 3083 3102 3106 3106
19 1996 3118 3124 3183 3246
20 1995 3117 3160 3242 3359
21 1994 3191 3307 3315 3335
22 1993 3203 3258 3256 3292
23 1992 3221 3232 3330 3356
24 1991 3214 3295 3288 3248
age birth H24.11 H25.11 H26.11 H27.11
25 1990 3237 3281 3152 3073
26 1989 3364 3245 3226 3208
27 1988 3298 3201 3215 3213
28 1987 3420 3422 3408 3367
29 1986 3481 3497 3444 3439
30 1985 3570 3572 3533 3528
31 1984 3805 3826 3826 3798
32 1983 3694 3670 3675 3696
33 1982 3751 3780 3786 3790
34 1981 3826 3815 3773 3790
35 1980 3916 3892 3881 3915
36 1979 4049 4045 4062 4060
37 1978 4065 4068 4077 4102
38 1977 4229 4252 4246 4262
39 1976 4225 4199 4212 4226
40 1975 4288 4290 4268 4299
41 1974 4586 4606 4564 4591
42 1973 4584 4578 4574 4578
43 1972 4387 4390 4415 4413
44 1971 4301 4332 4326 4284
45 1970 4156 4146 4157 4145
46 1969 4221 4190 4195 4183
47 1968 3973 3976 3974 3952
48 1967 4149 4147 4142 4121
49 1966 3126 3135 3133 3129
age birth H24.11 H25.11 H26.11 H27.11
50 1965 3866 3860 3862 3841
51 1964 3727 3719 3725 3718
52 1963 3628 3619 3615 3617
53 1962 3560 3547 3535 3536
54 1961 3532 3530 3523 3520
55 1960 3669 3665 3645 3635
56 1959 3768 3741 3725 3717
57 1958 3718 3691 3685 3672
58 1957 3623 3607 3592 3579
59 1956 3783 3770 3762 3772
60 1955 3974 3966 3951 3947
61 1954 3956 3958 3960 3921
62 1953 4145 4138 4144 4118
63 1952 4415 4398 4361 4337
64 1951 4689 4675 4658 4623
65 1950 4947 4928 4891 4855
66 1949 5400 5372 5317 5294
67 1948 5058 5021 4993 4951
68 1947 4872 4834 4792 4734
69 1946 3019 2993 2972 2935
70 1945 2964 2942 2920 2883
71 1944 3665 3627 3584 3553
72 1943 3457 3432 3388 3359
73 1942 3530 3470 3424 3367
74 1941 3598 3544 3513 3455
age birth H24.11 H25.11 H26.11 H27.11
75 1940 3304 3252 3197 3134
76 1939 2927 2881 2830 2781
77 1938 2831 2795 2740 2690
78 1937 3164 3084 3005 2912
79 1936 2861 2787 2730 2657
80 1935 3020 2938 2854 2756
81 1934 2673 2541 2457 2373
82 1933 2551 2457 2361 2247
83 1932 2469 2358 2265 2177
84 1931 2150 2057 1957 1852
85 1930 2056 1964 1854 1743
86 1929 1911 1793 1689 1577
87 1928 1761 1607 1500 1377
88 1927 1587 1468 1336 1205
89 1926 1499 1380 1263 1118
90 1925 1250 1152 1034 927
91 1924 1112 1019 892 784
92 1923 956 848 741 627
93 1922 836 723 624 543
94 1921 640 561 479 401
95 1920 559 480 400 321
96 1919 374 306 240 185
97 1918 293 252 207 146
98 1917 272 220 172 132
99 1916 207 157 129 92

久留米市の場合、同年齢集団別平均人口は概ね3000人になりますが、生年毎に見ていくと人口が突出した同年齢集団が幾つか見つけられます。人口がもっとも大きな集団は、いわゆる「団塊の世代」で一般には「1947年~1949年生まれの集団」とされますが、久留米市では5000人前後の同年齢集団が生年が1947年~1950年の4年間続いています。次に人口が多い同年齢集団は「団塊ジュニア」ですが、久留米市の場合は概ね「4000人以上の同年齢集団」と定義できそうで、生年が1967年~1979年の13年間続いています。このようなツインピークを形成する人口構成は日本全国で概ね共通の特徴ですが、同年齢集団別人口はそのような人口構成の変動の把握に便利です。

次に平成25年~27年の前年に対する増減数表に着目します。前年に比べて15名以上の増加が確認できるところには赤いマークを付けています。

一般に、人口動態は出生・死亡による「自然動態」と転入・転出による「社会動態」の2つの要因からなりますが、同年齢集団による人口動態把握では出生数による増加は0歳の時のみで、1歳以降の「自然動態」は死亡による現象のみになります。したがって1歳以降で人口増加が発生した場合はすべて転入による「社会動態」が要因となります。

久留米市の場合、ここ3年間は毎年2800~2900人の新生児が誕生していますが、さらに50人以上の毎年1歳児の転入も確認できます。この0歳~1歳の人口増加により同年齢集団別平均人口の3000人に肉薄しています。また、久留米市では近年15歳~22歳の人口増加が確認できます。これは大学や医療施設、更に福岡県内でも有数の進学校が所在していることと関係があるかもしれません。

次に人口増加が確認できている同年齢集団にフォーカスして月次の人口動態を見ていきます。

まずは平成12年(2012年)生まれの人口動態のみを次の2つのグラフで示します。

【グラフ 9】同年齢集団人口データの実データと長期変動(移動平均)

コホートによるデータは特定の条件に基づく特定の集団(ここでは「同年齢の集団」)の時間的変化を示す時系列データと見なすことができますが、実際にはここで示した登録人口の実データのように細かく見ると頻繁に変動しています。これは時系列データが長期的に変動する成分と短期的な変動を繰り返す成分から構成されることを意味しています。時系列データから長期的に変動する成分のみを取り出す基本的な方法として移動平均法が用いられます。ここでは登録人口が年間を通して(12ヶ月の期間で)周期的に変動することに着目して、過去12ヶ月の人口数の平均値をその月の値としてグラフにプロットしました。このグラフにより平成12年生まれの人口動態が年毎に増加していることが確認できます。

さらに長期的な変動成分が抽出できると、実データからの差分を求めて短期的な成分変動を求めることもできます。

【グラフ 10】同年齢集団人口データの短期変動(差分)

毎年8月と11月に短期的な人口増加のピークがあることが確認できます。

では前述の表で人口増加が確認できている各同年齢集団の長期変動を見てみましょう。

【グラフ 11】平成9年~12年生まれの同年齢集団人口の時系列変動
【グラフ 12】平成6年~8年生まれの同年齢集団人口の時系列変動
【グラフ 13】平成3年~5年生まれの同年齢集団人口の時系列変動

いずれの同年齢集団も人口増加が確認できますが、平成3年生まれの同年齢集団だけが平成25年12月をピークに人口が減少しています。
このようにコホートから得られる時系列データを分析すると人口動態を年齢別に細かく分析することができます。



まとめ

同年齢集団の人口動態の分析により、久留米市の平成24年(2012年)以降の人口増加は、0歳~1歳の新生児と15歳~22歳の高校生・大学生の人口増加によって全体人口が押し上げられていることが確認できました。これらの若年層の人口増加が近年の久留米市が人口減少から脱却できた原動力でしょう。特にグラフ13を見ると大学生の卒業後の転出に一定の歯止めがかかっているように見えますが、この傾向が今後も続くことが人口増加が継続する条件のように見えます。

社会問題としての「少子化」の本質は、支援を必要とする地域の高齢者を地域の若年層で支え続けられるかという点にあります。現在、既に年金受給年齢に達しておられる「団塊の世代」の方々の引退後が議論されていますが、例えば久留米市では17年後に到来するであろう「団塊ジュニア」の方々の引退による第2の高齢化インパクトの方が大きいであろうことが同年齢集団人口動態の分析でわかります。おそらく「団塊ジュニア」の方々の「団塊の世代」の方々よりも、偏りを持って全国に散らばっているでしょうから、その引退の影響は各地方公共団体によってかなり異なったものになるのではないかと我々は推測しています。

本レポートでの結論として、各地方公共団体が公開している住民基本台帳データを使った同年齢集団の人口動態分析は現状をより精緻に把握できる点で有効なのではないかと考えます。特にコホートによる人口データの時系列化を用いれば、全く異なる分野、例えば計数経済学などでの時系列データの分析手法が応用できる可能性があります。そのような試みにより人口動態によるこれまでとは少し異なる新たな知見を得ることが期待できます。

クラウドコンピューティングやビッグデータ分析の出現により、可能になった新たなデータ分析方法は人口動態分析にも活用できるのできるのではないかと、我々は考えています。

以上

参考文献

  1. 人口ビジョン  久留米市
  2. 住民基本台帳 年齢別人口  久留米市
  3. 「少子化非常事態宣言 日本を救うラストチャンス 少子高齢化対策待ったなし!」
    全国知事会  全国知事会議(平成26年07月15日、16日)講演資料
  4. 「地方人口ビジョン」及び「地方版総合戦略」の策定に向けた人口動向分析・将来人口推計について」
    まち・ひと・しごと創生本部  平成26年10月20日公開資料
  5. 「新幹線開業による中心市街地活性化に関する調査 東北地域をモデルとした検討結果(調査報告書)」
    北海道商工会議所連合会 平成21年2月発表
  6.   関連サイト:北海道新幹線web(北海道新幹線建設促進期成会)
  7. 「新幹線整備が地域経済に与えた影響事例」(鯉江康正)
    長岡大学 地域研究センター年報「地域研究」2011 第11号(通巻21号)